本人確認業務の本質
売主が所有者のなりすましでニセ者(詐欺師)だった場合、売買契約は成立しておらず所有権移転登記は無効です。
無効にもかかわらず買主様へ不動産代金の支払いをさせた場合、司法書士が賠償責任を負います。
司法書士が地面師防止のために本人確認をすることは、重要な業務となります。
AI技術により人工知能が人間の仕事を奪うという論調があります。
ブロックチェーンによって、本人確認が簡単にでき司法書士が存在する必要がなくなると言う司法書士がいます。
はっきりと言いますと司法書士の本人確認には、全く影響がありません。
まず、不動産登記手続きに関する確認は2種類があります。
【完了している登記】
①登記事項証明書(登記簿)の記載は正しいか(事後的な改竄がされていないか)
【不動産取引から発生する登記】
②目の前にいる所有者と名乗る人間が本人か(取引から登記に反映する際のチェック)
①に関しては、ブロックチェーンの考えはコストや安全性から完璧ではありませんが有効だと思います。この先、高度な技術がいろいろ出てくることでしょう。これは、あくまでも法務局の管理上の問題となりますので、司法書士の関わる部分ではありません。この部分に関しては、ブロックチェーンが司法書士の仕事を奪うことはありません。
②に関してですが、目の前にいる人間。生体としての対象物が本人かどうか判別することになります。この部分が司法書士の業務であると明確な理解が必要です。①と②が混在していて法務局サイドの部分を議論したり心配したりし、司法書士業務に関し何を議論しているのかわからなくなっている司法書士の方が多くいます。
以前金融機関では、通帳のことを免責証券と呼んでいる時代がありました。通帳と通帳印を持っている人間に対し預金を払い出しすれば金融機関は責任を負わないと言う理屈があったからです。
その後、裁判所は、定期預金に関し通帳と通帳印を使った払い出しであっても金融機関の本人確認による過失を認定しました。昨今の風潮では、金融機関は免責証券機能が役に立たないため通帳の廃止に動いています。web通帳と言う方式にし発行コストを削減する方向になっています。
我々の司法書士の本人確認業務ですが、今すぐにでも登記識別情報を使った登記は、どのようなときにでも完全に有効とする制度を作れば、登記制度は完璧です。要するに登記識別情報を盗まれた被害者は救われないようにすれば良いだけです。ですが、通帳を盗まれた被害者を切り捨てず金融機関に責任を負わせる、登記識別情報を盗まれた被害者を切り捨てず救済し、司法書士の本人確認に関して責任を負わせる。当たり前ですが、日本の法制度は、過失のない方が泣き寝入りするような仕組みではありません。過失のない被害者は当然救済され、報酬をもらい業務をしているプロが責任を負う部分が多くあります。
そのような法制度ですから、登記識別情報を発行しても完全な本人確認はできません。盗まれた登記識別情報かもしれないからです。ブロックチェーンを使って暗証番号やパスワードやらを次から次へと作成して配ったところでその暗証番号やパスワードを盗まれた被害者が保護される制度ですから意味がありません。登記識別情報や印鑑証明書など、すでにあるわけですから生体情報と違い、第三者が盗めるものを次から次へと増やし続けても意味がないのです。
仮に不動産詐欺を完全に防止する制度を構築するならば、具体的な生体情報を登記簿に入れる方法が考えられます。
例えると顔写真、指紋・DNA情報などを登記簿に登録する方法です。この方法ができるのであれば、成りすましによる不動産犯罪はかなり防げると思いますが、このようなことは民主国家ですることは不可能でしょう。
外国人の指紋押捺を強制する制度が憲法違反とされ指紋押捺制度が廃止になったこともあります。プライバシー保護から生体情報を国家が強制取得することや、ましてやその情報を司法書士が入手し本人確認に利用することはかなり難しいことでしょう。
生体情報であっても、公開してしまえば偽造する手段を考え出す者も想定できます。
このような前提がありますので本人確認は、常に不完全な情報だけで対応をしなければなりません。それが個人情報が守られ人権・プライバシーを尊重する民主国家の宿命であり、国民の自由が補償され独裁国家とは違う民主国家の素晴らしさでもあります。
ブロックチェーンで本人確認が完璧にできるとか、何かもの凄いAIが本人確認をして司法書士の仕事がなくなるなどは、全くの幻想です。個人情報のデータの入手ができない状況で万能なシステムをプログラミングすることはできません。プログラミング技術のない方の妄想にすぎないのです。
民主国家として、国民の個人情報の保護している以上、個人を判別するための本人確認の情報の入手は極めて困難です。私たち司法書士は、わずかな個人情報しか入手できずそれを補うために司法書士としての経験値が非常に重要となります。地面師に遭遇した経験のあるベテラン司法書士の場合、不動産詐欺師特有の緊張感、緊張からくる署名の際の微妙な手の震え、一流の司法書士は見逃したりしません。経験・知識の乏しさのため、地面師なんていないと言う認識で日常業務をしている司法書士とは、判断のレベルや視野の広さがまったく違います。
フォーマットに当てはめるだけ、データを突き合わせるだけ、そんな作業をアナログ的に毎日繰り返している司法書士事務所が大量に存在します。相続・商業登記・ネット銀行等のかなりの部分の単純業務は、プログラミングされたコンピューターシステムが取って代わるかも知れません。その際には、単純業務しかできない司法書士では、存在を否定される状況がくることでしょう。
単純業務で大規模化した法人が増え、高度な職人的能力を持つ貴重な司法書士は速いスピードで年々減少しています。
ほとんどの司法書士が、本人確認をしていると言っておきながら、本人がニセ者のなりすましかどうかまったく確認をせず、身分証明書のコピーを取ることだけが目的となりコピーをとる儀式で業務の完了になっています。自分たちが、何のために何をしているのか論理的に思考できない司法書士が大量に増加しています。
本人確認の本質も理解できない司法書士は、AIやブロックチェーンに仕事を奪われるという思い込みをします。
誰にでもできる身分証明書のコピーを取るだけの単純な本人確認業務をしているため、誰がやっても決済業務は同じと言うような低レベルな認識の司法書士が大規模法人に大量に存在します。そのような誰でもできる業務を日常とする司法書士は、自分自身の価値を自己否定をする傾向があります。
今や不動産詐欺師を防止する能力がある司法書士は非常に貴重な存在です。
司法書士法人関根事務所では、データ加工に関しては、社内で開発したプオリジナルのプログラミング技術により効率化をしています。
その上でコンピューターにはできない業務を日々行い、将来のAIですら対応できない技術を磨き研鑽を積む司法書士たちがここにいます。
そのような本人確認の本質を身につけた、特殊な能力を持った司法書士を一人でも増やすために、司法書士法人関根事務所は日夜邁進して参ります。
追記
顔写真付きマイナンバーカードの普及とマイナンバーカードのICを確認できるシステムは有望です。なお、盗んだマイナンバーカードを防止するためにも面前で写真付きのマイナンバーカードで操作することを確認する必要がありますから、そのため直接面会をする確認はなくならないことでしょう。
もし、完全な非対面ですと上記の記載のように、マイナンバーカードを空き巣やスリが盗んだりパスワードを入手できれば良いだけです。遠隔地からの非対面での操作ですと地面師は逮捕されなくなります。非対面であれば不動産詐欺師に取って逮捕リスクがノーリスクになりますから地面師天国になることは確実です。結果、地面師事件が増大することでしょう。
また、非対面取引をターゲットにし、不動産詐欺師の出現回数は圧倒的に多くなるので、非対面の仕組み自体が信用されないことが予想されます。
司法書士を廃除して、ソフトウェアで登記申請を自動化する開発の動きもあるようですが、危険で機能しないことでしょう。
国家資格者と違い、不動産会社の一般社員には賠償請求が及ばないため、登記申請を自動化した場合にはトラブルが増大することは簡単に予想されます。
スルガ銀行のかぼちゃの馬車事件のときは買主サイドではありましたが、不動産会社の社員が書類の改竄をし、金融機関が原本確認をしたとねつ造書類を作成する構図で、第三者のチェックが働きませんでした。高額な費用を取得する関係者だけでは、犯罪を防ぐことはできません。少額な報酬で賠償責任が重く、第三者で中立である司法書士が存在することで不動産の売買取引の安全性が成り立ってきたことは歴史が証明しています。
(近年の司法書士の人数増大による過当競争で一部に法令を守らない、質の悪い司法書士が増え、中立性が揺れ動いている現状はあります。)
直接の面談をしている現在でも、顔写真付き身分証明書を要求できず「年金手帳しかない」で押し切られる司法書士が多くいます。仮に将来マイナンバーカードの普及率が90%となっても、地面師が残りの数%の身分証明書へと誘導をしてくることは予想されます。顔写真付きの身分証明書以外を拒否できない現状では、現場の苦労は無くならないと思います。危険な本人確認へと受託競争でさらされる現状では、安全なシステムの利用も困難なことでしょう。職人的な技術・経験が必要とされることは今後も続いて行きます。
注) 相続登記の義務化に伴い、相続人の方が戸籍の取得を一箇所の役所で取得する制度がはじまります。いろいろな役所で取得する手間が省け、相続登記の本人申請が増加し、司法書士の相続登記が減少する可能性があります。 成年後見手続きにおいて、一時利用が可能な改正となりそうです。100ヶ月就任していた成年後見業務が4ヶ月でよいとなると4%まで業務が減少すると言うことになります。成年後見人の就任業務が激減する可能性があります。 不動産売買の決済業務と違い、 今後、業務によっては激動の時代になることでしょう。
高度なコンサルティングには、問題の分析能力が重要です。
分析能力なしに、クライアントの問題を解決することはできません。
司法書士法人関根事務所で勤務をすると自然に問題解決ためのスキルアップが可能です。
AIがこれから台頭してくる時代は、コンサルティング業務が司法書士の生き残れる場所です。
書類作成入力作業中心の業務ではなく、付加価値の高い、差別化できるコンサルティング能力を手に入れるために、分析能力がアップする環境へ
求人のご応募はこちらへ
※求人急募(2024-11-20現在)
1 ネット銀行
2 電鉄系の不動産事業者がやっているキャッシュレス決済サービス(立会なし)
に関して、エスクロー・エージェント・ジャパン(EAJ)へのシステム利用料という名目の支払いが司法書士法違反(不当誘致)の恐れがあり、懲戒処分になるリスクがあるとの通達があります。登記工場で違法行為の手伝いをしている勤務司法書士の方必読です。
重要 懲戒処分の危険の司法書士連合会通達文書はこちらへ
債務不履行責任ではなく不法行為責任のため、勤務司法書士が立会で個人的な賠償を負うリスクあり。こちらで確認を
立会をしている勤務司法書士個人にも賠償責任のリスクはあります。病院が一切の責任をとり、手術をした医者が責任がないとは考えないことでしょう。不動産詐欺・偽造のチェックは高度な業務のこちらで確認を
31条があるから司法書士が財産管理業務ができるわけではありません。非対面取引による本人確認
上記の「本人確認業務の本質」を読んでいただいた方ならば、すでに非対面取引が現実的ではないと理解できることだと思います。
zoom等のPCディスプレイでのweb面談の本人確認を想定した場合、現在の回線の画質に相当な問題があります。
スマホの4Gの回線で、マイナンバーカードを提示された場合、そのマイナンバーカードに両面テープで別の写真を貼った程度のものでも判別ができないのが現状です。
ようするに盗んだマイナンバーカードがあれば、両面テープで詐欺師の写真を貼り付ければ簡単に偽造マイナンバーカードが出来上がります。
中身は本物なので電子署名もできてしまいます。
せめて本物のマイナンバーカードで電子証明書したか、司法書士が面前で確認をする必要があるのではないでしょうか。
当然盗まれた被害者の方は、保護されるわけですから不動産取引は成立しません。
このような状態で、マイナンバーカードと登記識別情報があれば非対面取引で数千万円単位の代金の支払いが安全にできると主張する方がいれば理解に苦しみます。
現在の通常の取引では、面前で詐欺師が人をだまし、取引場所が銀行が多いのが一般です。銀行には、強盗対応のセキュリティ上隠しボタン一つで警察がかけつけることができる場所です。不動産詐欺師のハードルは高いことでしょう。
非対面取引になると、空き巣がマイナンバーカードや暗証番号の窃盗に成功すれば、高いハードルがあった不動産の現金化が簡単になります。
遠隔地から非対面で銀行に行く必要も無い、面前に現れ現行犯逮捕のリスクが無い、詐欺の部分のハードルはほとんどなくなります。
これが、安全な不動産取引でよいのでしょうか。
ATMでキャッシュカードで現金を引き出された場合は、キャッシュカードを盗まれた方は保護されませんが、窓口で定期預金を解約すると銀行の本人確認の落ち度を追求した判例があります。
ATMとは同列ではないのです。1日に何億円も引き出せるATMは存在しません。法人ならば高額なネット振り込みを選択できますが、個人の方へ、国民全員へ高額なネット振り込みを強制するような制度にしたいのでしょうか。
現状において、非対面取引を推奨するような一部の司法書士のリスク管理が理解出来ません。
危険な制度へ改正をすべきと考えているのでしょうか?
1日の上限金額が100万円・50万円のATMと同じ感覚で、数千万、数億円単位の不動産取引と同列に考えているのでしょうか?
識別情報が金庫から無くなっていたら気づかない人間が悪いと言う制度にしたいのでしょうか?
保険証とマイナンバーカードの一体化で、不動産が売り飛ばされても泣き寝入りするような重要なカードを日常的に持ち歩くような社会にしたいのでしょうか?
識別情報・マイナンバーカードでの電子署名があれば、盗まれた方が保護されない制度に変えるならば自動ですべて不動産決済の取引が完了しますし、司法書士の要らない世界があることでしょう。
そのような制度改正があれば、完全な非対面取引は可能ですが、非常に危険な取引であって、これを自ら推奨する一部の司法書士の思考はおかしいと感じます。
【犯罪収益移転防止法】これは、マネーロンダリングをさせない仕組みではなく、後の捜査で対象を絞りやすくするための事後資料の本人確認です。
【IT重説】重要事項の説明もトラブルが発生した場合に、説明を事前にする程度の内容で犯罪を防止するような内容ではありません。
高額な詐欺を未然に防ぐために、司法書士が介在する不動産取引とはまったくレベルが違います。
1日の上限のあるATMと同列に扱わない前提があるから、裁判所は、銀行の窓口での定期解約において銀行に責任を負わせたのです。
現在のマイナンバーカードや登記識別情報を盗まれた被害者が救済される制度が変わることはないと思いますし、安全な非対面取引はありえません。現在の技術では、司法書士が面前で関与することが重要です。
正確な情報の理解があれば、不動産取引に関して非対面取引にし不動産の売買代金を払う買主がいるとは思えません。
このようなリスクをまったく理解ができない司法書士がいるのも現実ですし、不動産詐欺を未然に防ぐ意識の欠落した司法書士がいることも情けない現実です。
今後、詐欺事件に出会った場合、そのような非対面取引を顧客にすすめる不動産仲介会社が社会的な非難をうけることあるかもしれません。
なお、大手仲介会社のサポートサービス・キャッシュレスサービス等に関しては、司法書士が売主・買主に個別面談をしているだけであって非対面取引ではまったくありません。
多忙なお客様ならわかりますが、定年退職し暇な時間を持て余している当事者へ、無駄に司法書士の個別面談をすすめている現状があります。
ブロックチェーンへのハッキング
実際におきた、モナコインのハッキング
通常、マイナー(採掘者)は採掘したブロックをネットワークにブロードキャストするのだが、今回、一部のマイナーが、採掘したブロックを隠し持ったまま次々にブロックを掘り進めてチェーンを生成し、他のチェーンより長く生成したタイミングでネットワークにブロードキャストしている。PoWでは、マイナーによるチェーンの分岐を無効化するため、最も長いチェーンがメインのチェーンになるようルールが定められているが、分岐したチェーンがさらに長くなることで置き換えられてしまい、直近のトランザクションが消失してしまう。攻撃者は、直近のトランザクションが消えてしまう性質を利用し、自身が保有していたモナコインをチェーンの書き換え前に取引所に送金し、すぐに出金する。その後、ブロックチェーンを書き換えることで送金履歴が消失し、送金されたはずのモナコインが取引所には存在しないことになるため、すでに出金処理した取引所は、出金額分の被害を受けてしまう。
回避策として、取引所ではブロックの承認数を引き上げることでチェーンの確度を上げ、安全性を高めようとしている。例えば、30ブロックなどひとまとまりのブロックが進んだら、ユーザーからの入出金などを承認する。ブロックの承認数が多いほど、ブロックでトラブルがあった場合でもトランザクションの処理を防ぐことができる。一方で、ブロックの生成時間分待ち時間が発生するため、ユーザーの入出金が反映されるまで時間がかかってしまう。
対等性が崩れるような計算能力(ハッシュパワー)が極めて高いマイナー(採掘者)が存在する場合にはハッキングの可能性がある。